ホイール組みをしていると、今まで自転車に乗っていだけでは、気にしていなかった事に気付かされます。
その一つがタイヤ装着時のスポークテンションの変化。
結論から書きますが、ホイールにタイヤとチューブを装置し、空気を充填すると
スポークテンションが下がります。
長年自転車に乗っている人でも知らない人、という気にしていない人が多いのではないでしょうか。
私もホイールを組むまで、気にしていませんでした。
スポークというのは、ハブとリムを引っ張る役目をしており、それによりホイールが構成されています。
そして、その引っ張る強さが俗にスポークテンションと言い、主にKgf(キログラムフォース)という単位でその強さを表します。
これは、何Kgの力が加わっているか という事を表しているので、馴染みのある単位ですね。
kgとkgfは何が違うとかと言うと、kgは質量の事を言い、kgfは力の強さを表しています。
例えば体重60kgの人が地面に立っている場合、その人の持っている質量が60kgという事になり、地面には60kgfの力が加わっていると考えられます。
N(ニュートン)という単位でも表さられる事もありますが、kgfを使う事の方が多いかと思います。
但し、DTのリムにはこんな表記がありました。
これは、最大で1200Nのスポークテンションまでかけられますよ と言う事になります。
ちなみに
1N = 約0.102Kgf
なので、Nを10で割った値がだいたいのkgfの値となるので、このDTのリムには最大でも120Kgf程度までのスポークテンションにしなければならないとなります。
スポークテンションが強ければそれだけ撓みが少ないので、剛性が高くて反応の良いホイールになると一般的には考えられます。
そしてホイールのスポークのうち、後輪のフリーボディが付いているドライブサイドが最もスポークテンションが高くなり、そこのスポークテンションを上限ほどの120kgfや130kgfに合わせて組む事が多いです。
さて冒頭に書いた、ホイールにタイヤとチューブを装着し空気を入れるとスポークテンションが落ちるというのはどういう事か。
考えて見れば難しい事ではありません。
空気を充填すると、チューブが膨らみますね。
当たり前ですが、チューブは円形になっており、チューブが膨らむ事によりホイールのリムの全周が内側に向けチューブに押される形になります。
そうなるとリム自体が若干ですが縮みます。
そのため、張ってあるスポークが緩む形となるため、スポークテンションが下がってしまうのです。
頑張ってホイールを組んで、自転車にセットアップして走った後、スポークに緩みがないからチェックしてみると、しっかり張ったはずのスポークが緩くなってる!しかも全部のスポークが!
って事になりびっくりしましたが、よくよく調べてみると、当然の事でした。
で、どのくらいのタイヤとチューブを装着しエアーを充填すると、どのくらいスポークテンションが落ちるか。
先日組んでみたリアホイールにクリンチャータイヤとチューブを装着し5barまで入れたときのスポークテンションを計測したところ
フリーハブ側
130kgf → 105kgf
ブレーキローター側
105kgf → 80kgf
おおよその値ですが、やはりスポークテンションが落ちました。
割合にして20%ほどのドロップとなります。
落ちる割合はリムの剛性によって変わると考えられますが、こうしてみるとなかなか大きい数値です。
ちなみに空気を抜くと
フリーハブ側 : 120kgf
ブレーキローター側 : 95kgf
ほどまでスポークテンションは戻りましたが、タイヤを嵌めるだけの状態でも10%ほどスポークテンションが落ちている事が分かります。
さて、タイヤとチューブと空気をセットし、スポークテンションが下がる事で、もう一つ問題が起こる事がありました。
それはセンターがズレる恐れがある事。
ホイールのスポークテンションが全体的に落ちた結果として、合わせたはずのセンターが若干ズレてしまう事がありました。
これはスポークテンションが左右で差が出てしまう事の多いリアホイールの方で見られるようで、フリーハブ側に0.5mm弱ズレてしまう事がありました。
フリーハブのあるリアホイールは形状がいわゆる「おちょこ」となり、組み方にもよりますがフリーハブ側は、反フリー側となるブレーキローター側に比べスポークテンションが高くなります。
そのため、タイヤとチューブをセットし全体のスポークテンションが落ちた時に、元々のスポークテンションが高いフリーハブ側に僅かに引っ張られてしまうのかもしれません。
そのため、リアホイールを組む場合、左右のスポークテンションが大きく異なる場合は、そのセンターズレを考慮してホイールを組む必要もあるでしょう。
そしてスポークテンションドロップはチューブレスだとさらに顕著に現れます。
先ほどとは別のホイールになりますが、フロントホイールとして組んだホイールに、30mmのシュワルベプロワンをチューブレスでセットした時のスポークテンションの変化を見てみました。
タイヤと空気を入れていない状態
左側(ブレーキローター側) : 110kgf
右側 : 100kgf
タイヤを嵌めた状態
左側 : 90kgf
右側 : 80kgf
4barまで空気を充填
左側 : 80kgf
右側 : 70kgf
スポークテンションの降下率は約30%。
20%ほどの降下率であったクリンチャータイヤに比べ大きい値となりました。
チューブレスタイヤを使った事がある人は経験があると思いますが、タイヤが固くホイールにタイヤを嵌めるのに苦労した事があると思います。
タイヤ自体がタイトな造りであるため、ホイールに嵌めるだけでもその全周に強い圧力が掛かり20%ほどのスポークテンションが落ちています。
そして、エアーを入れると更に10%ほどスポークテンションが落ちました。
ロードバイクでは、一般的にチューブレスタイヤ(チューブレスレディ含め)は乗り心地が良いとい印象があります。
チューブレスタイヤが快適な理由としては、チューブが無く空気圧を低くできるためと言われていますが、スポークテンションが落ちている事も要因の一つと言えるでしょう。
一方、チューブを入れたクリンチャータイヤの反応の良いキビキビした走りは、相対的に考えればスポークテンションがそれほど落ちていない事ご要因の一つとも言えるでしょう。
優しい乗り心地でないかもしれませんが、それはそれで魅力はあります。
チューブレスタイヤを履いて、反応の良さを求めるのであれば、タイヤをセットした状態を想定したホイール組みが出来れば理想的なのかもしれませんね。
もしくはタイヤを履いた状態で微調整するのも場合によってはアリかもしれません。
ただしその場合、エアーを抜いた際のスポークテンションがハブやリムの最大スポークテンションを超えないようにしないと、部品が破損する恐れがあるので注意が必要ですが。
今回はスポークテンションドロップについて書いてみました。
最後までお読みいただきありがとうございました。